税務・会計情報

教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置

3月に入り確定申告もいよいよ佳境を迎えました。
確定申告の期間が1か月しかないため、この時期に仕事が集中するのはやむを得ないことですが、1年間のスケジューリングの中で、この時期に集中する仕事をできる限り分散させ、常に質の良いサービスを提供できる環境を整えることも私たちの重要な任務です。とはいっても、なかなか思うようにはいかないもので・・・

さて、最近、相談・質問されることが多い事項の一つに「教育資金の贈与」があります。平成25年度税制改正大綱に盛り込まれた高齢者の貯蓄を若い世代に移転させ、消費を活性化させることを意図した「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」のことです。

この制度によれば、以下の7条件すべてを満たす贈与が非課税となります。
① 平成25年4月1日~平成27年12月31日までの間に、
② 直系尊属(親、祖父母等)が30歳未満の受贈者(子、孫等)の、
③ 教育資金に充てるために、
④ 金銭等を、
⑤ 信託銀行等の金融機関に信託をした場合、
⑥ 1人につき、1,500万円まで、
贈与税を課さない、というものです。

この制度を利用することの最大のメリットは、将来予定される支出に対して、あらかじめ「一括贈与」できることでしょうか。相続税の発生が予想される高齢者にとっては、孫が複数人いた場合には、財産の大きな減少となり相続税の節税につながることでしょう。一方、受贈する側にとっては、子供の教育で資金負担が大きい時期に受ける援助ですから当然貴重です。

一方、気を付けなければいけない点もあります。
教育資金以外に使用できないのは当然ですが、受贈者の30歳到達時までに使いきれなかった資金があった場合には、その時点で使い切れなかった額に通常の贈与税がかかります。相続税率よりも高い贈与税率ですから、思わぬ高額な課税が発生することもあり得ます。子供や孫が、予定した通り、しっかり教育を受けてくれれば問題はないのですが、こればかりは将来のことなので不透明です。

贈与税の仕組みには、年間110万円の非課税枠が設けられています。1人当たりの年間教育費は、多くの世帯でこの非課税枠で収まるのかもしませんし、一括で1,500万円を贈与できる人はごく限られた人かもしれません。

また、相続税法第21条3において、「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの 」は贈与税が非課税であることが規定されています。つまり、通常の教育費の贈与はそもそも非課税なのです。

ただし、将来の教育費に備えて贈与した場合にはたとえ教育費であっても贈与税がかかりますので、今回の制度はやはり「一括」で贈与できることが最大のメリットでしょうか。
新しい制度はいいところにばかり注目が集まりますが、すべての納税者のケースで効果があるものばかりではありません。ご検討されている方はぜひ一度ご相談ください。

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