税務・会計情報

H25.3月決算の改正ポイント

 自らへの戒めも兼ねて、平成25年3月決算の改正ポイントを再確認しておきます。
 どこかのHPコピって貼り付けただけじゃないか!! という苦情は受け付けません。あくまでも「戒め」「注意喚起」、間違えないように何度も何度も復習しなくてはいけません。

Ⅰ 法人税率の引下げ
 中小法人 年800万円以下の部分:15%
 年800万円超の部分         :25.5%
 中小法人以外           :25.5%
 適用時期 平成24年4月1日から平成27年3月31日までの間に開始する各事業年度

Ⅱ 復興特別法人税制度
1.概要
 この制度は,所得金額に対する法人税の額に10%の税率を乗じて計算した復興特別法人税を法人税と同時期に申告・納付を行うもの。
源泉徴収された復興特別所得税がある場合や,外国税額控除の控除限度超過額がある場合,復興特別法人税から控除することができる。
2.適用時期
法人の平成24年4月1日から平成27年3月31日までの期間内に最初に開始する事業年度開始の日から3年経過日までの期間内の日の属する事業年度(課税事業年度)。
3.課税標準
課税標準は,各課税事業年度の課税標準法人税額で,新設法人,事業年度変更などの場合を除き,各課税事業年度の基準法人税額となる。
基準法人税額は,以下の算式で算出される。
 基準法人税額 =「課税所得×法人税率」-「研究開発税制やグリーン投資減税などの税額控除額合計額」+「連結納税の承認取消に係る税額控除加算額」
4.復興特別法人税額
復興特別法人税の額は,「課税標準法人税額(基準法人税額)×10%」となる。
5.復興特別所得税額控除
① 概要
内国法人が各課税事業年度において課される復興特別所得税額は,復興特別法人税の額から控除できる。
② 控除方法
復興特別所得税は所得税と合わせて源泉徴収されるが,支払調書等には区別されて表示されていない。このため,復興特別所得税の控除を適用する場合,源泉徴収税額を所得税と復興特別所得税に配分する処理(按分計算)が必要となる。
③ 税額控除を適用しない場合
復興特別所得税額控除を適用しない額がある場合,適用しない復興特別所得税の額については,法人税の課税所得の計算上損金算入となる。
④ 法人事業税の所得割
法人税で損金算入された所得税額について,法人事業税の所得割では損金不算入となる。しかし,法人税で損金算入された復興特別所得税額については,法人事業税の所得割でも損金算入となる。
6.外国税額控除
① 概要
内国法人が外国税額控除を適用し,法人税における外国税額控除の控除限度額を超える場合,その超過額を復興特別法人税から控除できる。
② 控除限度額
復興特別法人税の額×当期の国外所得/当期の全世界所得
③ 他の税目との控除の順序
控除対象となる外国法人税額は,①法人税,②復興特別法人税,③道府県民税,④市町村民税の順に控除し,それでも控除しきれない額がある場合には控除余裕額の範囲で,⑤法人税,⑥道府県民税,⑦市町村民税の順で控除できることになる。
7.復興特別法人税から控除する順序
外国税額控除,復興特別所得税額控除の順で控除する。
8.申告・納付
① 原則
法人は,各課税事業年度終了の日の翌日から2月以内に,税務署長に対し申告書を提出し,復興特別法人税の額を国に納付しなければならない。
② 申告期限延長特例
法人税において申告期限延長特例を適用している場合,届出等なしに自動的に復興特別法人税についても申告期限延長特例が適用される。
③ 赤字法人の申告
課税標準法人税額がない場合は復興特別法人税について申告の必要はない。
※ 加算税
課税標準法人税額がなく,復興特別法人税の申告書を提出していない法人について,調査等で加算税が生じることとなった場合,法人税の期限内申告が行われたかどうかにかかわらず,復興特別法人税については無申告加算税となるとされる(復興特別法人税に係る加算税事務運営指針1)。
ただ,課税標準法人税額が0の申告(ゼロ申告)をすれば,加算税は過少申告加算税と扱われる。
9.還付
復興特別所得税額について,復興特別法人税から控除しきれなかった金額がある場合,税額還付が受けられる。申告書の提出の必要のない赤字法人について,税額還付を受けるには,申告書の提出が必要となる。

Ⅲ 貸倒引当金制度の見直し
1. 概要
貸倒引当金制度については,従前,期末時に有する金銭債権を個別評価引当金と一括評価金銭債権に区分したうえで,一定の要件の下,それぞれの金銭債権の繰入限度額の範囲内で損金経理により損金算入することを認めていた。
しかし,平成23年12月税制改正では「貸倒引当金制度」の対象法人を①中小法人,②銀行,保険会社等,③一定の金銭債権を有する法人に限定した。いずれにも該当しない法人については,原則として貸倒引当金の適用が廃止される。
ただし,激変緩和措置として,経過措置事業年度に限り改正前法人税法(旧法)の効力を残し,改正前の繰入限度額を四分の一ずつ縮小していく経過措置なども設けている。
2.適用時期
平成24年4月1日以後開始事業年度から適用開始。3月決算法人の場合,同改正は平成25年3月期決算が初適用となる。
3.対象法人
対象法人を,①中小法人,②銀行,保険会社等,③一定の金銭債権を有する法人に限定した。①②の法人には,従前通り,その法人の有する金銭債権に貸倒引当金制度の適用が残される。
ただし,③一定の金銭債権を有する法人については,その有する一定の金銭債権に限り,貸倒引当金制度の適用が残される。
法人の種類 具体例
中小法人 資本金の額が1億円以下の法人,公益法人等又は協同組合等,人格のない社団等
銀行・保険会社等 銀行,保険会社,銀行持株会社,保険持株会社等
一定の金銭債権を有する法人 ファイナンス・リース債権を有する法人,一定の金融債権を有する法人
※対象債権は,一定の債権に限定
4.経過措置
a 改正前の繰入限度額が四分の一ずつ縮小していく経過措置
前記の①②③のいずれにも該当しない法人の有する金銭債権(前記③の法人の有する一般債権を含む)については,平成24年4月1日から平成27年3月31日までの間に開始する事業年度(経過措置事業年度)に限り,改正前の繰入限度額に下記の割合を乗じた額を繰入限度額とすることが認められる。貸倒引当金制度の適用範囲の限定に伴う実務への影響を緩和することを目的としている。
経過措置事業年度 損金算入割合
平成24年4月1日から平成25年3月31日までの間の開始事業年度 四分の三
平成25年4月1日から平成26年3月31日までの間の開始事業年度 四分の二
平成26年4月1日から平成27年3月31日までの間の開始事業年度 四分の一
b 個別評価金銭債権と一括評価金銭債権に係る経過措置の違い
経過措置事業年度において,新法・旧法(=経過措置)のいずれを適用するかは,選択制となっている。ただし,個別評価金銭債権と一括評価金銭債権では,経過措置上の扱いが異なる。
個別評価金銭債権については「債権」ごとに新法・旧法のいずれか有利な方を選択適用できる。“一の債務者”に対して一定の金銭債権と一般債権を有する場合にも,債権ごとに新法・旧法のいずれかを選択適用できる。一方,一括評価金銭債権については「事業年度」ごとに新法・旧法のいずれか有利な方を選択適用できる。
c 貸倒実績率に係る経過措置
一括評価金銭債権に係る貸倒実績率を求める場合,原則として,新法が適用される一定の債権を抜き出し,これをベースに算定する。
しかし,経過措置上,施行日以後最初の事業年度では,新法を適用する事業年度開始日に設立されたものとみなして計算することを認めている。これは継続適用を要件とする。
Ⅳ 欠損金の繰越控除制度
1.概要
青色申告書を提出した事業年度に生じた青色欠損金の繰越控除制度については,その欠損金を繰越控除する事業年度の繰越控除前の所得金額の100分の80相当額を限度として,損金に算入する(中小法人等を除く)。災害損失金についても同様となる。連結納税については,連結親法人(中小法人等を除く)の連結欠損金の控除限度額が,欠損金控除前の連結所得の100分の80相当額とされている。
また,繰越欠損金(青色欠損金,災害損失金,連結欠損金)の繰越期間が9年(改正前は7年)に延長された。平成20年4月1日以後に終了した事業年度で生じた欠損金額について適用された。これら繰越期間の延長等は,全法人が対象となる。
2.適用時期
平成24年4月1日以後開始する事業年度について適用する。
3.適用要件
欠損金発生年度の帳簿書類の保存を要件とする。国税通則法の改正により,法人税の欠損金額に係る更正の請求期間も9年となる(平成23年12月2日以後法定申告期限が到来する法人税について適用される)。
4.中小法人等
中小法人等に対しては,100分の80相当額とする措置は適用されず,従来どおり,その事業年度の欠損金の繰越控除前の所得金額の範囲内(100分の100)となる。
○ 中小法人等とは
事業年度終了時において次に該当する法人をいう。
①普通法人のうち,資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下であるもの,又は資本若しくは出資を有しないもの。ただし,次の法人を除く。
 ・大法人(次の1~3の法人)との間にその大法人による完全支配関係がある普通法人
  1 資本金の額又は出資金の額が5億円以上である法人
  2 相互会社及び外国相互会社
  3 法人課税信託に係る受託法人
 ・普通法人との間に完全支配関係がある全ての大法人のうち,いずれか一の法人とその普通法人との間にそのいずれか一の法人による完全支配関係があることとなるときのその普通法人
 ・相互会社
 ・法人課税信託に係る受託法人
② 公益法人等又は協同組合等(法人税法以外の法律によって公益法人等とみなされる法人を含む)
③ 人格のない社団等
5.会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入
会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入制度の適用対象となる欠損金額の範囲の見直しが行われるとともに,青色申告書を提出した事業年度の欠損金又は災害による損失金からなる部分の金額については,青色申告書を提出した事業年度の欠損金等の繰越期間の延長と欠損金等の繰越控除の制限による繰越控除の対象となる青色欠損金額から切り捨てる。
6.帳簿書類保存要件
欠損金の繰越期間の延長に伴い,一定の帳簿書類を保存することが要件として追加されており,帳簿書類の保存期間は9年間となる。平成20年4月1日以後に終了する事業年度に係る帳簿書類から9年間保存する必要がある。
7.経過措置
平成24年4月1日前に一定の事実が生じた法人の同日以後最初に開始する事業年度から,その一定の事実の区分に応じた一定の日以後7年を経過する日の属する事業年度までの各事業年度において,欠損金の控除限度額を所得金額の80%相当額とせず,従来どおり欠損金額控除前の所得金額とする経過措置が設けられた。
ただし,この経過措置については,確定申告書,修正申告書又は更正請求書に平成24年4月1日前に以下①~④までの事実が生じたことを証する書類の添付がある場合に限り適用する。
○ 一定の事実及び一定の日とは
① 更生手続開始の決定があったこと(改正事業年度開始の日の前日までに更生手続開始の決定を取消す決定の確定などの事実が生じた場合を除く)
→ その更生手続開始の決定に係る更生計画認可の決定の日
② 再生手続開始の決定があったこと(改正事業年度開始の日の前日までに再生手続開始の決定を取消す決定の確定などの事実が生じた場合を除く)
→ その再生手続開始の決定に係る再生計画認可の決定の日
③  法人税法施行令第24条の2 第1項に規定する事実(一定の私的整理)
→ その事実が生じた日
④ ①から③までの事実に準ずる事実
→ その事実が生じた日
Ⅴ 寄附金の損金算入限度額の見直し
1.概要
一般の寄附金の損金算入限度額については,資本金等の額の1,000分の2.5相当額と所得金額の100分の2.5相当額との合計額の4分の1(改正前は2分の1)に引き下げる。一方,特定公益増進法人等に対する寄附金の特別損金算入限度額については,一般の寄附金の損金算入限度額の縮減額と同額の拡大がなされた。連結納税制度の場合にも同様の改正が行われている。

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