税務・会計情報

日本版NISA

日本は、4月の日本銀行による量的・質的金融緩和により、デフレ脱却に向け動き出しました。とはいえ、国民の生活に改善が見え始めているかと言えば、何の変化も見られないのが実情かもしれません。それでも、実態よりも先を見ている証券市場では、景気回復の期待を背景に日経平均株価には断続的な上昇がみられました。このところアメリカでの量的緩和縮小懸念や中国国内景気の不透明な状況により、乱高下を繰り返してはいますが、落ち着きを取り戻せば、次第に回復軌道に戻るのでしょうか。

さて、現在の上場株式等の配当・譲渡所得等に係る税率10.147%は軽減税率であり、平成25年12月末をもって廃止され、平成26年1月から本則である20.315%になります。
これに伴い、平成26年1月より、非課税口座内の少額上場株式等の配当・譲渡所得等の非課税措置(いわゆる「NISA」)が導入されます。

この制度の概要は次の通りです。
証券会社等に当該非課税口座(以下NISA口座)を開設すると、年間100万円を上限に投資枠が与えられ、以後5年間は、NISA口座内で上場株式や投資信託への投資から生じた譲渡益や配当金・分配金が「非課税」になるというものです。それを翌年以降5回、最大で合計500万円まで投資できます。

例えば100万円投資した株式が1年後に倍になって売却したとすると、売却益が100万円になります。本来は、これに対して20.315%(所得税:15%、復興特別所得税:0.315%、住民税5%)、203,150円の税金がかかることになるわけですが、当該制度を利用すると、これが全て非課税になりますので、NISA口座で大きく利益が出た場合には、メリットはかなりあると言えます。

メリットは大きくありますが、今までの一般口座や特定口座と下記のような違いがあるので注意が必要です。

(1) NISA口座と他の一般口座や特定口座との間で損益通算ができません。従って、NISA
  口座で損をして、他の口座で利益が出ていた場合には、税務上不利になります。

(2) NISA口座から他の一般口座や特定口座への移管はできますが(逆は不可)、その場合、移管時の時価が新たな口座での取得価額となります。したがって、トータルでは損をしていても、譲渡益が発生し、税金が生じる場合があります(例えば、NISA口座内で100万円で購入した株式について、時価が60万円の時点で特定口座へ移管し、その後時価が80万円になった際に譲渡した場合、トータルでは20万円の損となりますが、税務上、20万円の譲渡益となります)。

(3) ISA口座を開設する年の1月1日時点で20歳以上である必要があります。

(4) 複数の証券会社等に同時にNISA口座を開設することはできません(1人1口座)。


異次元の金融緩和により、これから預金利息に変化がみられるかもしれませんが、それでも現行金利は普通預金で0.02%程度です。株式投資はリスクがあり、抵抗がある方も多いかもしれませんが、アベノミクスの成果で企業業績が回復し始めたら、投資をしている人としてない人ではかなりの差が生まれてしまうかもしれません。

うまく利用することができれば、税制上も大きなメリットがあると思われます。これから投資を考えようとする人は、NISAによる株式投資を検討してみてはいかがでしょうか。

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