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派遣3年撤廃提言 厚労省研究会

 立秋も過ぎ、朝夕の風に秋の気配が感じられる季節になってきました。日中はまだまだ厳しい暑さですが、実家の庭先でこおろぎの鳴き声を聞きながら季節の移り変わりを感ぜずにはいられない「社労士の大城」です。
 労働者派遣制度の見直しを検討してきた厚生労働省の有識者研究会は8月20日、企業が一つの業務に派遣労働者を使用できる期間を最長三年に制限する現行ル-ルを撤廃し、労働組合の同意を条件に人を入れ替えれば派遣を使い続けられるようにすべきだとする報告書をまとめました。
 労働者派遣法は、派遣先企業の正社員が仕事を奪われることがないよう派遣を臨時的・一時的な仕事に限定してきましたが、報告書はこの原則を大きく転換する内容です。
 企業にとっては、派遣が活用しやすくなり人件費の抑制につながるメリットがあります。一方、労働者側からすると、正社員の仕事が派遣に置き換えられたり、非正規雇用が固定化したりする懸念があり、労働組合などから反発が出そうです。法改正に向けた厚労省の審議会では、年末の取りまとめ向け労使の激しい論議が予想されます。
 現在は、無期限に派遣できるのは通訳やOA機器操作など、いわゆる「専門二十六業務」のみ。その他の一般業務は派遣先の正社員の雇用保護を理由に原則一年、最長三年に限定されています。
 報告書は、専門性の判断が難しくなったとして専門業務の区分を廃止し、一般業務との一本化を提言しています。一人の派遣労働者が同じ職場で働ける期間を最長三年とする。その上で、派遣先の労使協議で労働組合や労働者代表から異論がなければ、企業は、別の派遣労働者を入れ替えることを前提に、三年ごとの更新ができるとしています。
 三年の期限を迎えた派遣労働者については、本人の希望に応じて派遣先への直接雇用の申し入れや次の派遣先の提供などを人材派遣会社に求めています。
 派遣会社との間で期間を限らず雇用契約を結ぶ無期雇用の人(正社員)の派遣は「無期雇用派遣」と定義し、業務の種類を問わず無期限での派遣を認めることにしています。
 1986年施行の労働者派遣法は、企業の使い勝手をよくするため、規制緩和が続きました。当初は専門性の高い三十六業務に限って認められ、その後建設や医療など一部を除き、適用対象業務を原則自由化。2004年には製造業務への派遣も解禁されました。
 しかし、2008年のリ-マンショックで派遣切りが横行。派遣制度への批判が高まり、民主党政権は労働者保護の姿勢を鮮明にし、その後、日雇い派遣原則禁止などを盛り込んだ改正労働者派遣法が成立しました。
 今回の報告書は、対象業務の拡大を中心に規制緩和を繰り返してきた派遣制度に対し、民主党政権は労働者保護のための規制強化を進め、自民党政権は以前の規制緩和への逆戻りを求めています。「世界で一番企業が活躍しやすい国」を目指す安倍政権の方針に沿った内容になっていますが、派遣労働が広がれば、正社員の減少や不安定雇用の拡大などさまざまな副作用が懸念され課題は多いかと思います。

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