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有給休暇買い取り解禁?

 毎年参加している静岡駿府マラソンが、来年より静岡マラソンに名前を変え、徳川家康の顕彰四百周年記念事業としてフルマラソン大会にリニュ-アルされます。制限時間が5時間30分と厳しい大会になるかと思いますが、「人は常に、上を目指す」の精神で初日に参加申込みをした「社労士の大城」です。

 先日、Yahooに気になるニュ-スが出てました。
 
「有給休暇買い取り解禁すれば取得日ゼロの人は年収37万円増も。」

 有給休暇の買い取りというのは、有給をもらう代わりにその分の給与をもらうという制度ですが、現在の日本では認められていません。1955年の労働基準局長通達で禁じられています。労働強化につながり、労働基準法違反に当たるという理由です。
記事はそれを解禁すれば、取得できなかった分の有給休暇の給与が支払われるため、給与が増えるだろうという内容。
 
 結論から言えば有給休暇の買い取りを解禁すれば、労働者の実質給与は下がります。
 
 なぜか。

 例えば、従業員100人ほどで有給取得率0%の会社のケ-ス。計算を簡単にするため、有給取得時の給与は1日につき1万円としておきます。有給の取得日数は勤務年数によって1年間で10~20日と法律で決まっていますが、ここでも計算を簡単にするため全員が1年に20日有給の取得が可能ということにします。
 有給の買い取りが解禁された場合、この会社はどうなるでしょうか。まず、この会社に限らず有給取得率はまず間違いなく100%になるでしょう。また、休暇としての取得率と買い上げの取得率の割合がどうなるかわかりませんが、仮に買い上げとしての取得率が100%だったとしましょう。

 その場合、会社からすると1人あたりの年間給与は20万円上がります。
この会社は100人いるので、

 20万円×100人、年間の人件費に係るコストは2,000万円も上昇することになります。
 
 これだけ人件費が上がっても耐えられる会社ばかりならそれでいいのですが、実際にはそうではないでしょう。となれば、人件費の向上に耐えられない会社では、賃金設計の段階でこの有給休暇の買い上げ分を組み込んだものにしておかなければなりません。どういうことかといえば、今までは有給休暇を取得していなくても年収300万円の人も場合、有給の買い上げをしてやっと年収が300万円になる、という賃金設計をするということです。
 こうした賃金制度のなかで休暇として有給を取得すればどうなるでしょうか。当然賃金は下がります。有給買い上げの場合、「労働日に労働した分」+「有給の買い上げ分」の給与がもらえますが、休暇として有給を取得すると「労働した分」の給与しかもらえなくなります。
 もちろん、余裕のある会社などではわざわざこうした賃金設計しない会社も多いでしょうが、買い上げてもらった方が、休暇として取得するよりも給与が増えるのは間違いないわけで、労働者の休暇取得のモチベ-ションを下げるのには十分な効果を発揮するはずです。
 
 労働問題でなんの疑いもなくこうしたアイデアを出す専門家がいるので、「契約社員を5年間雇用したら無期雇用というル-ルを作れば正社員が増える」という法改正のように、継ぎ接ぎだらけの今日の制度をとても危惧しています。

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