税務・会計情報

通勤手当の消費税

※ このページの掲載は、平成25年11月に行いました。
「交通用具(自転車、自動車等)を使用する場合」の「非課税限度額」が改正されました。
  改正の内容は「マイカー・自転車通勤者の通勤手当(改正)」のページをご参照ください。


 11月に入りました。
 半年間に亘った「スーパークールビズ」期間が終わり、ネクタイに新鮮さを感じている「税理士 中嶋昌啓」が、前回に続き通勤手当をテーマに消費税関係について記載いたします。

 通勤手当の消費税の取り扱いについては、文中の文言等、前回記載しました「通勤手当の非課税(所得税等)限度額」に関係がありますので参照してください。

 通勤手当は「課税(交通費の性格があるから)」でしょうか、「不課税(給与の性格があるから)」でしょうか?

 結論は、「原則」として「課税(仕入)」になります。
 交通機関の運賃には消費税が含まれており、その実費を負担するわけですから、消費税法上は「課税(仕入)」になるとされています。
 交通用具使用の場合も、同様に考えます。

 しかし、「原則」には「例外」がつきもので、「通勤手当」として支給していても「課税(仕入)」にならない(不課税)場合がありますので、課税・不課税の「例」を挙げて説明いたします。

 まず、国税庁(国税局、税務署)は、「消費税法基本通達11-2-2(通勤手当)」で

 『事業者が使用人等で通勤者である者に支給する通勤手当(定期券等の支給など現物による支給を含む。)のうち、当該通勤者がその通勤に必要な交通機関の利用又は交通用具の使用のために支出する費用に充てるものとした場合に、その通勤に通常必要であると認められる部分の金額は、課税仕入れに係る支払対価に該当するものとして取り扱う。』

としています。

 すなわち、『その通勤に通常必要であると認められる部分の金額』だけ、「課税仕入」になるとしており、その他(通常必要でない金額)は、「不課税仕入(給与)」になります。

 このことは、まず、所得税法上の「非課税」部分の金額は、「交通機関利用、交通用具使用」とも、消費税は課税仕入に該当することになります。

 所得税法上の「非課税」部分の金額 = 消費税は課税仕入

 所得税法上の「課税」部分の金額 ≒ 消費税は不課税仕入

 では、所得税法上の「課税」部分の取り扱いについて例示します。
 (1) 交通機関利用の場合
  ① その通勤に通常必要であると認められる部分(合理的な運賃等)の金額が12万円で、12万円を支給した場合
     ↓
    所得税法上の課税金額の2万円を含んだ12万円「全額が課税仕入」になります。

  ② その通勤に通常必要であると認められる部分(合理的な運賃等)の金額が9万円で、グリーン車の料金3万円を含んだ12万円を支給した場合
     ↓
    所得税法上の非課税金額の「9万円が課税仕入」になり、グリーン車料金の「3万円が不課税仕入」になります。

 (2) 交通用具使用の場合
  ① 所得税法上の非課税限度額を超えて支給する場合の、「その通勤に通常必要であると認められる部分の金額」は「次の式で計算した金額と所得税法上の非課税限度額のどちらか高い金額」になります。
   「通勤距離(往復)」×「稼働日数」×「ガソリン単価÷走行燃費(km/L)」

  ※「稼働日数」は、月ごとの日数か、年間稼働日数を12で除して1月当たりの日数としたもの等になります。

  ※「ガソリン単価÷走行燃費(km/L)」は、個人ごとではなく、受給者全員を対象に平均的な金額(同一)等になります。

  ② 通勤距離が片道9km、稼働日数が23日、ガソリン単価が160円、走行燃費が10km/L の場合
    9km×2(往復)×23日×160円÷10 = 6,624円 
    6,624円 > 4,100円

  ③ 上記「②」の場合で、通勤手当を「1万円」支給している場合
    所得税法上の非課税限度額は4,100円ですので、所得税等の課税対象は5,900円ですが、消費税の課税仕入の金額(税込)は6,624円になり、この金額を超える3,376円が不課税仕入の金額になります。

  ④ 上記「③」の計算は一人ごと行いますので、事務量等によりこの計算をしない場合は、課税仕入額が少なくなる場合がありますが、『所得税法上の「課税」部分の金額 = 消費税は不課税仕入』として経理することになります。

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