税務・会計情報

消費税率引上時の会計処理Ⅱ

消費税率引き上げまで、あと2か月を切りました。
会計ソフトもバージョンアップして、8%に対応できるようになり、具体的な経理処理を考えると、改めて「このケースは5%?8%?」を思われることも多いのではないでしょうか。

今回は、支払う方の立場から、『前払いをする場合の経理、申告処理について』掲載いたします(経過措置は考慮していません)。

担当は、「税理士 中嶋昌啓」です。

 一般的な取引として、『前払い』処理をする項目は、家賃(事務所等)、保守料、リース料等があるでしょうか。
 
 従来は、「消費税法基本通達11-3-8(短期前払費用)」の規定により、支払った(前払いした)課税期間(時)に「課税仕入れ」として処理できました。

※ 消費税法基本通達
11-3-8 前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した課税仕入れに係る支払対価のうち当該課税期間の末日においていまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。)につき所基通37-30の2又は法基通2-2-14《短期前払費用》の取扱いの適用を受けている場合は、当該前払費用に係る課税仕入れは、その支出した日の属する課税期間において行ったものとして取り扱う。

 この通達は、現存していますが、「消費税率の引上げ時」は、決算期にもよりますが、今までどおりにはいかないケースがあります。
 
今回の場合は、3月31日決算までの申告書では、支払った消費税額が「8%」相当額(4月以降分)であっても、「8%」相当額を控除できないのです(従来どおり5%か3%)。

 (4月以降の決算についても、会計ソフトによっては、3月31日以前の支払については、「8%」の処理ができない場合があります。その際(支払時)は、「仮払金」等で処理し、4月1日以降に費用科目等に振り替えることになります。)。 

それでは、事例により、具体的な経理(申告)処理の方法を、ご説明をいたします。

1事業年度(課税期間)・・・H25.4.1~H26.3.31
2支払内容等
  支払日・・・H25.12.28
  支払内容・・・月極契約の事務所家賃の「26.1~26.12」の12月分
  支払金額・・・月額(消費税抜)10万円×12月
          消費税額 5千円(5%)×3月(1~3月)
                8千円(8%)×9月(4~12月)
          合計 1,287,000円
3 その他・・・法人税の申告においては、法人税基本通達2-2-14(短期前払費用)の規定により、全額「損金算入」している。

 (原則)・・・3月分(5%時)ついてのみ、仕入税額控除を行う。 
        9月分(8%時)は、翌課税期間で、仕入税額控除を行う。
   
(仕訳)賃 借 料 300,000円  預 金 等 315,000円(1~3月分)
     仮払消費税  15,000円
    賃 借 料 900,000円  預 金 等 972,000円(4~12月分)
    仮 払 金  72,000円

   ※ 「仮払金 72,000円」は翌課税期間に、「仮払消費税」に科目振替を行い、消費税申告書の「課税仕入れに係る支払対価の額(税込み)」欄に「972,000円(8%)」を加算する。

 (その他)・・・12月分の支払金額(税込み)を、全額5%の消費税として、経理(申告)する。
         翌課税期間で、8%対象の支払について、正当に戻す修正仕訳(申告)を行う。

(仕訳)賃 借 料 1,225,714円 預 金 等 1,287,000円(1~12月分)
    仮払消費税  61,286円

   ※ 翌課税期間・・・消費税申告書は、前期の処理の「4~12月分)について、「5%の税率による仕入対価の返還を受けたものとして処理した上で、「8%の仕入税額控除」を行う。

     (修正仕訳)
    賃 借 料 900,000円 賃 借 料 925,714円(4~12月分)
    仮払消費税  72,000円 仮払消費税  46,286円

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