税務・会計情報

取得費加算の特例

平成26年度税制改正は3月20日の参議院の可決により成立しています。その主な内容は本税務情報において何度かご紹介している通りですが、あまり目立たない改正の中にも特定の方にとっては非常に大きな改正があります。

 今まで相続財産である土地を譲渡した場合において、相続開始後3年10か月以内に譲渡した場合には、譲渡した者が相続したすべての土地に対応する相続税額を取得費とみなすことができる特例(租税特別措置法39条)が存在していましたが、今回以下のように改正されています。


(税制改正大綱より抜粋)
(1)相続財産に係る譲渡所得の課税の特例について、次の措置を講ずる。
① 相続財産である土地等を譲渡した場合の特例について、当該土地等を譲渡した場合に譲渡所得の金額の計算上、取得費に加算する金額を、その者が相続した全ての土地等に対応する相続税相当額から、その譲渡した土地等に対応する相続税相当額とする。


つまり、相続した土地を譲渡した場合に、納めた相続税を取得費に加算できるのは、「譲渡した土地に対応する相続税のみ」となります。現行制度では、土地については、譲渡した土地に対応する相続税だけでなく、他の譲渡していない土地にかかる相続税も譲渡した土地の取得費に加算できましたので、土地を多く相続した場合には、所得税がゼロになるケースも多々ありました。

この特例は、土地だけでなく株式等にも適用があります。株式等の譲渡の場合における取得費加算の計算は、従来より譲渡した株式に対応する相続税のみでしたので、計算上統一されたことになります。
今まで、土地の譲渡だけが取得費加算の計算上優遇されていたのは、導入された当時の相続税の物納の状況及び土地価格の高騰が背景にあったわけなので、現在の事情を考慮するとやむを得ない改正なのかもしれません。

多くの土地を保有しているが納税するための現金があまりないといったケースでは、この特例は非常に有効なものとして機能してきました。今後、相続税の増税が予定される中、譲渡所得税も増税となると、納税資金のねん出もしくは節税といった場面では、一定の方向転換を迫られるかもしれません。

なお、この相続税の取得費加算の特例の改正は、平成27年1月1日以後の相続により取得した土地等について適用されます。

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