税務・会計情報

飴と鞭(2015年度税制改正)

 ここ数日2015年度から適用となる税制改正についての情報が新聞を賑わせています。
 で、「結局のところ、どうなるのか」なるべく簡単に説明させて頂きます。

【飴】
 今後数年で法人税の実効税率を6%ほど軽減予定です。実効税率とは法人税だけでなく地方税を含んだ実質的な税負担であり、現状大企業で約35%としているものを29%くらいまで引き下げようというのが現在の取り組みです。
 これによる財源への影響額がなんと3兆円!

【鞭】
 ・・・いっぱいあります。
① 外形標準課税の強化
② 欠損金の繰越控除制度の縮小
③ 設備投資減税の縮小
④ 研究開発減税の縮小
⑤ 政策減税の縮小
⑥ 東京都などの上乗せ税率の見直し

上記のうち広く影響する①と②について、詳しく解説させて頂きます。

① 外形標準課税の強化
 現在資本金が1億円を超える大企業にだけ適用されている法人事業税の外形標準課税について課税構成を変えることにより国が安定した税収を確保するものです。
 給与の総額に基づく課税の構成を変えて、税金負担を赤字企業に重く、黒字企業に軽くする予定です。税収そのものは変わらないというのが政府の主張ですが、大企業の給与増額の制限(躊躇)を招くことにならないか懸念されます。
 また、現在資本金1億円を超える大企業にだけ適用されている本制度を、もっと対象法人を増やすことも検討しているようです。つまり、赤字の中小企業への税負担が増えるという事です。

② 欠損金の繰越控除制度の縮小
 現在中小企業については欠損金(赤字)の繰越控除に制限はありませんが、大企業はその期の黒字の8割まで過去の赤字を充当(控除)できます。
 つまり過去の累積赤字が3億あった場合、中小企業が1億の所得を出すと課税所得はゼロ(法人税・事業税、地方税は均等割のみ納税)、大企業が1億の所得を出すと課税所得が2千万円(実効税率35%で700万円納税+均等割)となっています。
 これを今後は6割までに控除を縮小するという見込みです。上記の例ですと大企業が1億の所得を出すと課税所得が4千万円(実効税率35%で1,400万円納税+均等割)となってしまいます。

再び【飴】
 企業からの不満が募る恐れもあるため、現在9年としている赤字繰越期間を10年以上に延長することも検討中だとか。


 新聞記事を読んで愚痴を一つ。
「外形標準課税が広がれば高い収益の企業は税負担が減るため、投資拡大などの効果が期待できる。赤字企業にとってはできるだけ早く黒字に転じようとする意欲が高まるとみられる。」
 ・・・そんな心配しなくても結構です。赤字でいいって思ってらっしゃる経営者なんていません。みんな頑張っています。

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