税務・会計情報

生前贈与の注意点

 本年1月1日以後の相続税の基礎控除の引下げ等を受け、生前贈与に関心が高まっています。

相続税の調査では、子や孫の名義になっている預金や不動産などが、生前被相続人から子等に贈与されたものといえるのかが問題となります。贈与の事実がなく、被相続人の固有の財産であれば、これらの財産は相続財産に含まれることになるからです。

 「名義預金」という言葉をお聞きになったことはありますか?
 「名義だけ他人から借りている預金」のこと。例えば父親が子供名義の銀行口座に毎年110万円(贈与税の非課税限度額)振り込むとします。普段からこの口座を子供が遣い、出金しているのであれば問題はありませんが、通帳・印鑑の所在を子供が知らず父親が管理しているのであれば贈与の事実は無く子供名義の預金残高全額が父親の相続財産となります。

 子供が遣ってしまうかもしれないから…、自分自身の何かのときの為に…、いろんなお考えはおありでしょうけれど贈与の事実認定は難しいものです。
 贈与とは「当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受託をすることによって、その効力を生ずる」とされています(民法549)。両者の意思があれば口頭でも贈与は成立しますが、調査等で贈与の事実が証明できるのかが問題です。


 贈与税の申告納付をしておけば、贈与の事実が税務署に認定されたものとして、今後の調査でも問題視されないだろうと捉える向きもあるようですが、贈与税の申告納付はひとつの判断材料に過ぎません。
 過去には、同族会社の株式に係る贈与税の申告納付がされていたものの「…贈与税の申告及び納税の事実は贈与事実を認定する上での一つの証拠とは認められるものの、贈与事実の存否は飽くまでも具体的な事実関係を総合勘案して判断すべきと解するのが相当である」として、その事実関係から贈与がなかったものとし相続財産に含まれるとした裁決もあります(平成19年6月26日)。

 客観的に贈与の事実が証明できるように、贈与のあった日付や内容等を記した贈与契約書を作成し、贈与財産を受贈者自身が管理しておくことが重要です。具体的には、預金口座への振り込み等で記録を残し、口座のカードや通帳・印鑑は受贈者が保有し口座の出し入れ等の管理をする、不動産であれば所有権移転登記をしたうえで受贈者が維持費の負担や不動産収入等の〈果実〉を収受するといったことが挙げられます。
 必ずしも公正証書にする必要はありませんが、公正証書にして確定日付をもらえば契約締結をより確実に示すことが可能です。

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