税務・会計情報

離婚を考えるようになったら…

 何やら縁起でもないタイトルになっておりますが、比較的若い弊事務所でも既婚者が過半数となっております。明日は我が身、備えあれば患いなしです。

 夫と離婚することになった妻が受け取るものといえば
①慰謝料
②養育費
③財産分与
といったところでしょうか。
それぞれ課税関係がどうなっているかお伝えします。

①慰謝料
 慰謝料とは精神的損害の賠償であって多くの場合は精神的な損害を受けたものに賠償して支払われる金銭そのものを意味します。算定そのものは弁護士さんの範疇かと存じますが、受け取り側も支払い側も課税関係は発生しません。

所得税法第9条第1項1第17号
損害賠償金(これらに類するものを含むしで、心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するものその他の政令で定めるものについては所得税を課さない。

②養育費
 養育費とは衣食住の生活費や授業料、医療費等子供が自立するまでに必要となるすべての費用のことです。
受け取り側
 養育費の支払いは未成年の子供に対する親の扶養義務の履行であり不当に高額でなければ贈与税は課税されません。
 ただし一括受取の場合は未だ生じていない将来の費用の前受なので、金額の積算根拠を明確にしておく必要があるかと存じます。
 支払い側も課税関係は発生しません。

③財産分与
 財産分与とは婚姻期間中の夫婦の協力で築いた共有財産を清算して分け合うことです。

民法第768条
1.協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2.前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。
3.前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。

受け取り側
 財産分与義務の履行であり、不当に高額でなければ贈与税は課税されません。
ただし不動産による財産分与の場合は以下の税金が分与後課されることとなります。
・登録免許税
・固定資産税
・不動産所得税

支払い側
 財産分与が不動産によりなされた際で、当該不動産の購入時よりも分与時の時価が高い場合には、支払い側に譲渡所得が生じ所得税が課税されます。

所得税基本通達33-1の4 
民法第768条《財産分与》の規定による財産の分与として資産の移転があった場合には、その分与をした者は、その分与をした時においてその時の価額により当該資産を譲渡したこととなる。

(注)
1 財産分与による資産の移転は、財産分与義務の消滅という経済的利益を対価とする譲渡であり、贈与ではないから、所得税法第59条第1項《みなし譲渡課税》の規定は適用されない。
2 財産分与により取得した資産の取得費については、その取得した者がその分与を受けた時においてその時の価額により取得したこととなることに留意する。

 ただし、財産分与の対象となる不動産は特別控除の対象となるものも多くあると想定されるので結果的に税負担は軽い又は無いケースが考えられます。

租税特別措置法第31の3条(居住用不動産の長期譲渡所得)
課税長期譲渡所得は6,000万円以下の部分は10%、6,000万円超は15%の分離課税。

租税特別措置法第35条(居住用不動産の譲渡)
譲渡益相当額から3,000万円を控除する。

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