税務・会計情報

国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等について

 国税庁ホームページに国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等関係の内容が公開されました。

 国外からのサービス提供(例えば音楽・広告の配信など)には、これまで消費税が課せられていませんでした。これは、電子的サービス取引につき消費税の課税判定について、取引の内外判定は「役務の提供を行う者の事務所等の所在地」として国外取引となり、課税されないこととなっていたためです。したがって、国外事業者は同じサービスを行っている国内事業者よりも消費税分安くサービス提供できるため、価格競争力の差が生じ、公正な競争環境にゆがみが生じているという問題がありました。
 今回の改正により、国内事業者が行った場合との均衡を保つため、内外判定の基準が「役務の提供を受ける者の事務所等の所在地」とされることとなりました。「内外判定基準の見直し」により、国外からのサービス提供にも国内からの提供と同様に消費税が課税されることになります。また、「課税方式の見直し」により、サービスの性質や契約条件などから明らかに「事業者向け」のサービスについてはサービス提供を受ける事業者が納税義務を課され(リバースチャージ方式)、それ以外は「消費者向け」としてサービスを提供する国外事業者が納税義務を課されることになりました。

① 電気通信利用役務の提供に係る内外判定基準の見直し
 電子書籍・音楽・広告の配信などの電気通信回線(インターネット等)を介して行われる役務の提供を「電気通信利用役務の提供」と位置付け、その役務の提供が消費税の課税対象となる国内取引に該当するかどうかの判定基準(内外判定基準)が、役務の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等の所在地から「役務の提供を受ける者の住所等」に改正されました。

    取引                   改正前              改正後
(1) 国内事業者 → 国外事業者  国内取引:課税   →     国外取引:不課税
(2) 国外事業者 → 国内事業者  国外取引:不課税   →   国内取引:課 税
(3) 国内事業者 → 国外消費者  国内取引:課税    →    国外取引:不課税
(4) 国外事業者 → 国内消費者  国外取引:不課税   →    国内取引:課 税
(5) 国内事業者 → 国内消費者  国内取引:課税    →    国内取引:課 税

「電気通信利用役務の提供」に該当する取引の具体例
○ インターネット等を通じて行われる電子書籍・電子新聞・音楽・映像・ソフトウエア(ゲーム などの様々なアプリケーションを含む。)の配信
○ 顧客に、クラウド上のソフトウエアやデータベースを利用させるサービス
○ 顧客に、クラウド上で顧客の電子データの保存を行う場所の提供を行うサービス
○ インターネット等を通じた広告の配信・掲載
○ インターネット上のショッピングサイト・オークションサイトを利用させるサービス(商品の掲載料金等)
○ インターネット上でゲームソフト等を販売する場所を利用させるサービス
○ インターネットを介して行う宿泊予約、飲食店予約サイト(宿泊施設、飲食店等を経営する事業者から掲載料等を徴するもの)
○ インターネットを介して行う英会話教室

② 課税方式の見直し(「リバースチャージ方式」の導入)
 電気通信利用役務の提供については、「事業者向け電気通信利用役務の提供」と「それ以外のもの」とに区分されることとされました。消費税法においては、課税資産の譲渡等を行った事業者が、当該課税資産の譲渡等に係る申告・納税を行うこととされていますが、電気通信利用役務の提供のうち「事業者向け電気通信利用役務の提供」については、国外事業者から当該役務の提供を受けた国内事業者が申告・納税を行う、「リバースチャージ方式」が導入されました。

③ 国外事業者から受けた消費者向け電気通信利用役務の提供に係る仕入税額控除の制限
 電気通信利用役務の提供のうち、事業者向け電気通信利用役務の提供以外のものについては、当該役務の提供を行った事業者が申告・納税を行うこととなりますが、国内事業者が国外事業者から消費者向け電気通信利用役務の提供を受けた場合、当分の間、当該役務の提供に係る仕入税額控除を制限することとされました。
*ただし、当該役務の提供を行った国外事業者が登録国外事業者(④参照)である場合には、当該登録国外事業者から受けた「消費者向け電気通信利用役務の提供」に係る課税仕入れについて仕入税額控除を行うことができることとされました。
<適用開始時期>
 ①~③の改正は、平成27年10月1日以後行う課税資産の譲渡等及び課税仕入れから適用されます。

④ 登録国外事業者制度の創設
 ③のとおり、国外事業者から消費者向け電気通信利用役務の提供を受けた国内事業者は、当該役務の提供に係る仕入税額控除が制限されますが、国税庁長官の登録を受けた登録国外事業者から受ける消費者向け電気通信利用役務の提供については、その仕入税額控除を行うことができることとされました。
<適用開始時期>
 登録国外事業者の登録申請は、平成27年7月1日から行うことができます。

○参考ホームページ○
「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等に関するQ&A」
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/pdf/cross-QA.pdf

「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等について(国内事業者の皆さまへ)」
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/pdf/cross-kokunai.pdf

「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等について(国外事業者の皆さまへ)」
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/pdf/cross-kokugai.pdf

「国外事業者が行う芸能・スポーツ等に係る消費税の課税方式の見直しについて」
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/pdf/tokuteiekimu.pdf

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