税務・会計情報

相続税?所得税?

第七回目となる税務・会計情報は「税理士 山田知広」が担当致します。第七回目のテーマは「相続税?所得税?」です。

 平成22年7月6日、遺族の方が年金として受給する生命保険金のうち、相続税の課税対象となった部分については、所得税の課税対象にならないとする最高裁判所の判決があり、相続等に係る生命保険契約等に基づく年金の税務上の取扱いが変更になりました。いわゆる「二重課税」の問題です。判決内容と認定された事実を簡単に解説すると下記のとおりです。

夫の死亡に伴って、2300万円の死亡保険金が発生し、妻はこれを10年間の分割(毎年230万円の年金形式)で受け取ることにしました。まず2300万円×60%=1380万円(相続税法による年金受給権の評価方法)を課税ベースとして相続税を申告し、さらに毎年230万円の年金から必要経費(支払った保険料相当額)を差し引いた金額を課税ベースとして所得税を申告しました。所得税法第9条(非課税所得)において相続により取得するものは非課税となっており、今回最高裁判所は、相続税の課税ベースである1380万円分が相続税と所得税の二重課税に当たり違法と判断したのです。

当時、この判決が大きく取り上げられた理由は、該当する保険契約の数が数百万単位であると言われ、多くの人に影響があるためです。実際、私自身も納税者の払いすぎた税額を還付するための手続き(更正の請求)や、取扱改正後の所得税の申告を行いました。具体的な申告手続きや計算方法は下記リンクよりご確認ください。

平成23年度の税務訴訟における国側の敗訴割合は13.4%となっています。この割合を高いと見るか低いと見るかは意見が分かれるところかもしれませんが、勝訴=正しいことを前提にすれば、国は100%正しくはないということでしょうか。

税理士法第一条に「税理士の使命」というものがあります。
「税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。」
私たち税理士は、この「納税義務の適正な実現」の為、日々努力していきたいと思います。

▲PAGETOP