税務・会計情報

相続財産とみなし相続財産

今回の税制改正では、平成27年1月1日以降発生の相続について、基礎控除が現行の6割に改正され、現在の相続税申告率4.1%(死亡者100人につき4.1人)から6%程度に上昇することが予想されています。また、居住用宅地等を相続した場合には、「小規模宅地等の特例」という相続税評価額の減額特例がありますが、申告した場合に限り特例適用があるため、実際には課税されない相続税の申告者は相当数増えることが予想されます。今まで相続税には無関心であった人の中にも関心が高くなっている人がいるのではないでしょうか。

そもそも相続税が課税される財産はなんでしょうか?
民法896条では、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を継承する。(以下略)」とし、また、相続税法基本通達では「金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのもの」とされています。

したがって、相続税が課税される財産には、被相続人が所有していた「本来の相続財産」と、被相続人が所有していた経済的価値とみなす「みなし相続財産」とがあります。
相続財産の主なもの
 ・現金、預金等
 ・土地、建物等
 ・有価証券等(国債、上場株式等)
 ・家庭用財産(家具、自動車、骨董、宝石等)
 ・事業用資産(機械、什器等)
 ・その他資産(ゴルフ会員権、貸付金、電話加入権等)
みなし相続財産の主なもの
 ・死亡保険金
 ・死亡退職金
 ・生命保険契約(契約の内容により本来の相続財産となるものもある)

 余談ではありますが、死亡退職金のすべてが「みなし相続財産」となるわけではありません。ある判例によれば、「(中略)受給権者の範囲及び順位につき民法の規定する相続人の順位決定の原則とは著しく異なった定め方がされているというのであり、(中略)遺族の生活保障を目的とし、民法とは別の立場で受給権者を定めたもので(中略)右死亡退職金の受給権は相続財産に属さず、(以下略)。」(最高裁昭和55・11・27判決)
つまり、民法の規定とは異なった枠組みで遺族の生活を保障する目的として支給されるものは、遺族固有の財産ということになります。このような取決めが法的にもなされているものには、公務員の死亡退職金などがあります。したがって、公務員の死亡退職金はみなし相続財産には該当しないようです。

今回の税制改正において、基礎控除の縮小とともに税率の変更も行われました。現行の相続税の枠組みにおいても申告が予想される方にとっては、今まで以上に節税を考える必要があるのはもちろんですが、今まで無縁と思われていた人たちも、税率の変更自体には影響がないかもしれませんが、基礎控除の縮小は少なからず影響することでしょう。

一次相続(例えば夫婦の場合、夫の相続)もさることながら、二次相続(妻の相続)も含めて検討することで今回の基礎控除の縮小等改正の影響を小さくすることはできます。
相続対策と一口に言っても、その対策をした瞬間に大きく税額が下がることはあまり考えられることではありません。なるべく早い段階で相続に関心を持ち、長い時間をかけて取り組んだ人が、築いた貴重な財産を維持できるものだと思います。今回の改正で関心を持たれた方はぜひご検討ください。

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