税務・会計情報

改正・安衛法によるストレスチェックによる義務化の懸念点

 先日、しまだ大井川マラソンに参加してきました。2年前のフルマラソン初挑戦では、ハ-フの延長くらいと軽く考えていた結果、制限時間超過で完走することが出来ませんでした。あの日から日々練習を積み重ね4時間53分で無事完走。今年のベストタイムといきませんでしたが(今年は今回で3本目のフルマラ)、きっちり借りを返して参りました。

 働く人の安全と健康を守るための法律「改正・労働安全衛生法」が、平成26年6月19日に国会で可決・成立しました。様々な改正がある中でも、特に注目したいのが「労働者の心理的な負担の程度を把握するための医師、保健師等による検査(=ストレスチェック)実施を事業者に義務づける」というものです。ただし、従業員50人未満の事業者は当分の間は努力義務となります。
 メンタルヘルスの不調により、「連続1ヶ月以上休業」または「退職した労働者」がいる事業所の割合は、全体の8.1%にも上るというデ-タがあり、ただでさえ労働力不足が叫ばれる中で、社会的に大きな損失となっています。(平成24年厚生労働省調べ)。今回の法改正で会社にストレスチェックを義務づけることにより、「働く人のメンタルヘルス不調を未然に防ぎたい」という狙いがあるようです。

・プライベ-トが原因の不調もあり、ストレスチェックに限界も

 厚生労働省が発表したストレスチェックの概要は以下の通りです。
 ①会社が、労働者の心理的な負担の程度を把握するための医師、保健師郎による検査 (=ストレスチェック)を受ける機会を提供する。
 ②①の検査で問題が見つかった人の希望に応じて、医師による面接指導を実施する。
 ③医師の意見を聞いたうえで、必要な場合には、作業転換・労働時間の短縮など就業上適切な措置をとる。
 
 会社が「ストレスチェックを行う」という今回の改正ですが、ストレスチェックそのものに限界があるのも事実です。
 ①スクリ-ニングの限界
 厚生労働省が例示したような簡単なテストで、働く上での心理的ストレスをすべて把握できるわけではありません。
 ②結果をよく見せたいという心理(歪曲)
 たとえ、精神的な問題を抱えていたとしても、労働者自身がそれを隠そうとしてテスト結果が歪んでしまう恐れがあります。
 ③労働環境Orプライベ-ト
 ストレスチェックで「問題あり」とされても、それが労働環境によるものなのか、プライベ-トが原因なのかがはっきりしません。近頃では、プライベ-トが原因のストレスを会社のせいにして、会社に多額の補償をせまるような不当な労働者も現れています。

・企業本来の義務への支障が懸念される

 いったん「会社の過失によるうつ病(労災)」と認定されてしまえば、会社は大きなダメ-ジを受けるため、最近では企業側もこういった問題に過敏になっています。もちろん、その結果としてメンタル不調にまつわる労災が減るのは望ましいことなのですが、あまり過敏になりすぎて、働く人がそれを悪用したり、企業本来の義務に必要な指揮命令・配置転換・社員教育などに支障が出ては困ります。 
 また、「ストレスチェックを行った」「その時には問題は見当たらなかった」ということが、いざ問題が起きた場合の「免罪符」になってしまうようなことも「あってはならない」ことです。
 色々と問題点が多いストレスチェックの義務化ですが、上手に活用されることで、一向に減らない過労によるうつ病自殺のような痛ましい事件が、少しでもなくなるように願ってやみません。

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