税務・会計情報

平成28年度税制改正要望

今月1日、各省庁からの平成28年度税制改正要望が公表されました。税制改正要望はあくまで要望なので、年末の大綱、その後の改正を経て実現されることになります。個人的には、特に目を引く要望が出されているわけではないと思いますが、その中でも注目される要望をいくつかピックアップしてみます。

【経済産業省】
・印紙税の根本的見直し(印紙税)
印紙税は経済取引における契約書や領収書等に対して課せられる文書課税であるが、近年の電子取引の増大等を踏まえ、制度の根幹からあり方を検討し見直す。

そもそも印紙税は、ヨーロッパにおいて戦費調達の為に導入された税制で、所得等に課税をしない担税力には疑問がある税制で、今までも様々な団体から廃止要望が出されています。電子取引などに対して印紙税は課税されないなど取引手段の選択によって課税の公平性が阻害されていること、近年カード決済が増大してきており、印紙税が取引実態の変化に対応できていないこと等を理由に廃止も含めた根本的な見直しがされることでしょう。

【国土交通省】
・空き家の発生を抑制するための特例措置の創設(所得税)
平成28年4月1日から一定期間内に、旧耐震基準の下で建築された居住用家屋(被相続人のみが居住しており、相続後、空き家となった場合に限る)を相続し、相続後一定期間内に当該居住用家屋の耐震リフォーム又は除却を行った場合、標準工事費(上限250万円)の10%を所得税額から控除する

以前このブログでも紹介しましたが、空き家対策推進特別措置法が本年2月から一部施行され、5月26日に全面的に施行されています。所得税においても、適切な管理が行われていない空き家が防災、衛生、景観等の地域住民の生活環境に与える深刻な影響を考慮し、適切な対策がなされた場合は一定の優遇措置を設けるものです。

【金融庁】
・死亡保険金の相続税非課税限度額の引上げ(相続税)
死亡保険金の相続税非課税限度額について、現行限度額に「配偶者分×500万円+未成年の被扶養法定相続人数×500 万円」を加算する

この要望には次のような理由が付されています。
「世帯主を亡くした配偶者と未成年の子からなる世帯において相続税納付後の生活資金をより確保していくための配慮が必要であることから、本施策は必要である。」
亡くなった配偶者が世帯主とは限りませんし、相続税を納付する世帯はわずか5%程度のいわゆる富裕な世帯です。そのような世帯に今回のような措置が必ずしも必要か疑問です。このようなところに減税させるよりはもっと別のところにあるのではないかと思ってしまいます。

・上場株式等の相続税評価の見直し(相続税)
上場株式等は、相続税の評価においては、原則として相続時点の時価で評価され、相続時から納付期限までの期間(10 ヶ月間)の価格変動リスクは考慮されていない。
このため、上場株式等は、他の価格変動リスクの小さい資産と比べ、相続税評価上の扱いが不利(相続税評価額が割高)となっている。当該相続税の負担感の差により、投資家の資産選択を歪めることがないよう、上場株式等の相続税評価の見直しを要望するものである。

上記は金融庁の要望理由ですが、相続財産の評価方法は、原則として、相続発生時の時価です。そこに納付期限までの評価変動を考慮するとなると、すべての財産に当てはまることになります。しかも、納付時点で評価が上がる場合も当然にあるわけです。発生時の時価で評価するという原則をゆがめることにならないのか疑問です。

ここで上げた以外にも各省庁から様々な改正要望が出されています。ちなみに、文部科学省からは健康問題と東京オリンピックを見据えたばこ税の増税も出されています。年末の大綱を経てどれだけの要望が実現するか注目です。

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