税務・会計情報

住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の非課税~平成27年度税制改正

 住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の非課税措置についてです。常にある措置なのですが、年によって控除額が変わりますのでパッと聞かれてパッと回答ができなくて手こずります。


1.制度の概要
 直系尊属(父母や祖父母など)から住宅取得等資金の贈与を受けた受贈者が,贈与を受けた年の翌年3月15日までに,その住宅取得等資金を自己の居住用家屋の取得や一定の増改築等に充て,かつ,その家屋を同日までに自己の居住の用に供したとき又は同日後遅滞なく自己の居住用に供することが確実であると見込まれるときには,住宅取得等資金のうち一定金額について贈与税が非課税とされる。

2.非課税特例の対象となる受贈者
 次の要件のすべてを満たす受贈者が住宅取得等資金の非課税の特例の対象者となる。
(1) 次のいずれかに該当する者であること。
 ① 贈与を受けた時に日本国内に住所を有する。
 ② 贈与を受けた時に日本国内に住所を有しないものの日本国籍を有し,かつ,受贈者又は贈与者がその贈与前5年以内に日本国内に住所を有したことがある。
 ③ 贈与を受けた時に,日本国内に住所も日本国籍も有しないが,贈与者が日本国内に住所を有している。
(2) 贈与を受けた時に贈与者の直系卑属であること。
(3) 贈与を受けた年の1月1日において20歳以上であること。
(4) 贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること。

3.特例の対象となる住宅取得等資金
 特例の対象となる住宅取得等資金は,受贈者が自己の居住の用に供する一定の家屋を新築若しくは取得又は自己の居住の用に供している家屋の一定の増改築等の対価に充てるための金銭をいう。
 なお,一定の家屋の新築若しくは取得又は一定の増改築等には次のものも含まれる。
(1) その家屋の新築若しくは取得又は増改築等とともにするその家屋の敷地の用に供される土地や借地権などの取得。
(2) 住宅用家屋の新築(住宅取得等資金の贈与を受けた日の属する年の翌年3月15日までに行われたものに限る。)に先行して行われるその敷地の用に供される土地や借地権などの取得。
(注)受贈者の一定の親族など受贈者と特別の関係がある者との請負契約等により新築若しくは増改築等をする場合又はこれらの者から取得する場合には,この特例の適用を受けることはできない。この場合の一定の親族など受贈者と特別の関係がある者とは,受贈者の配偶者及び直系血族や受贈者の親族で受贈者と生計を一にしているもの,受贈者と内縁関係にある者及びその者の親族でその者と生計を一にしているものなどが該当する。

4.特例の対象となる「一定の家屋」と「一定の増改築等」
 特例の対象となる「一定の家屋」と「一定の増改築等」の要件は次のとおりである。
(1) 一定の家屋の要件
 一定の家屋とは,次の要件を満たす日本国内にある家屋をいう。
 なお,居住の用に供する家屋が2以上ある場合には,贈与を受けた者が主として居住用にすると認められる1つの家屋に限られる。
 ① 家屋の登記簿上の床面積(区分所有の場合は区分所有する部分の床面積)が50㎡以上240㎡以下であること。
 ② 購入する家屋が中古の場合は,家屋の構造によって次のような制限が設けられている。
  (イ) 耐火建築物である家屋の場合は,その家屋の取得の日以前25年以内に建築されたものであること。
  (ロ) 耐火建築物以外の家屋の場合は,その家屋の取得の日以前20年以内に建築されたものであること。
ただし,家屋が地震に対する安全性に係る基準に適合するとして,一定の「耐震基準適合証明書」又は「住宅性能評価書の写し」等により証明されたものは,建築年数の制限はない。
 ③ 床面積の2分の1以上が専ら居住の用に供されること。
(2) 一定の増改築等の要件
 一定の増改築等とは,贈与を受けた者が日本国内に所有し,かつ,自己の居住用家屋について行われる増築,改築,大規模修繕,大規模模様替その他の工事のうち一定のもので次の要件を満たすものをいう( 措法70の2②四 )。
 ① 増改築等の工事に要した費用が100万円以上であること。なお,居住用部分の工事費が全体の工事費の2分の1以上でなければならない。
 ② 増改築等後の家屋の床面積の2分の1以上が専ら居住の用に供されること。
 ③ 増改築等後の家屋の登記簿上の床面積(区分所有の場合は区分所有する部分の床面積)が50㎡以上240㎡以下であること。

5.非課税限度額
 平成26年12月31日までの間,次の区分により,受贈者1人につき贈与税の非課税限度額(注1)は次のとおりとなる。
(1) 省エネ住宅・耐震住宅 (注2) の場合
最初に非課税の特例を受けようとする住宅取得等資金の贈与を受けた年に応じて,次の金額が非課税限度額となる。
 ① 平成24年:1,500万円
 ② 平成25年:1,200万円(東日本大震災の被災者は1,500万円)
 ③ 平成26年:1,000万円(東日本大震災の被災者は1,500万円)
(2) (1)以外の住宅の場合
最初に非課税の特例を受けようとする住宅取得等資金の贈与を受けた年に応じて,次の金額が非課税限度額となる。
 ① 平成24年:1,000万円
 ② 平成25年:700万円(東日本大震災の被災者は1,000万円)
 ③ 平成26年:500万円(東日本大震災の被災者は1,000万円)
(注1)  既に非課税の特例の適用を受けて贈与税が非課税となった金額がある場合には,その金額を控除した残額が非課税限度額になる。
(注2)  「省エネ住宅・耐震住宅」とは,省エネ等基準(省エネルギー対策等級4相当以上であること,耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上であること又は免震建築物であることをいう。)に適合する住宅用の家屋であることにつき,住宅性能証明書,建設住宅性能評価書の写し,又は長期優良住宅認定通知書の写し及び認定長期優良住宅建築証明書などを,贈与税の申告書に添付することにより証明がされたものをいう。

6.手 続 き
 非課税の特例の適用を受けるためには,贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に,非課税の特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に計算明細書,戸籍の謄本,住民票の写し,登記事項証明書,新築や取得の契約書の写しなど一定の書類を添付して,納税地の所轄税務署に提出する必要がある。

7.平成27年度税制改正による制度の延長・拡充
 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について,次の措置を講じた上,その適用期限を平成31年6月30日まで延長する。
(1) 非課税限度額
 ① 住宅用家屋の取得等に係る対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が10%である場合

住宅用家屋の取    右記以外            東日本大震災の被災者
得等に係る契約   良質な     左記以外の    良質な      左記以外の
の締結期間  住宅用家屋  住宅用家屋    住宅用家屋    住宅用家屋

平成28年10月~
平成29年9月 3,000万円 2,500万円 3,000万円 2,500万円

平成29年10月~
平成30年9月 1,500万円 1,000万円 1,500万円 1,000万円

平成30年10月~
平成31年6月 1,200万円  700万円 1,500万円 1,000万円

② 上記①以外の場合

住宅用家屋の取     右記以外 東日本大震災の被災者
得等に係る契約   良質な     左記以外の    良質な      左記以外の
の締結期間 住宅用家屋  住宅用家屋    住宅用家屋    住宅用家屋

~平成27年12月 1,500万円 1,000万円 1,500万円 1,000万円

平成28年1月~
平成29年9月 1,200万円  700万円 1,500万円 1,000万円

平成29年10月~
平成30年9月 1,000万円  500万円 1,500万円 1,000万円

平成30年10月~
平成31年6月  800万円  300万円 1,500万円 1,000万円

(注)  上記の「良質な住宅用家屋」とは,省エネルギー対策等級4(平成27年4月以降は断熱等性能等級4)又は耐震等級2以上若しくは免震建築物に該当する住宅用家屋をいう。
(2) 上記(1)の良質な住宅用家屋の範囲に,一次エネルギー消費量等級4以上に該当する住宅用家屋及び高齢者等配慮対策等級3以上に該当する住宅用家屋を加える。
(3) 適用対象となる増改築等の範囲に,一定の省エネ改修工事,バリアフリー改修工事及び給排水管又は雨水の浸入を防止する部分に係る工事を加える。
(注)  平成28年9月以前に契約を締結した住宅用家屋について上記(1)②に掲げる非課税限度額の適用を受けた者であっても,上記(1)①に掲げる非課税限度額を適用できることとする。
(4) この改正は,平成27年1月1日以後に贈与により取得する住宅取得等資金に係る贈与税について適用する。

▲PAGETOP